夫の親を介護した妻も相続できる!?特別寄与料とは 2020.10.20
I.民法上の取り扱い
■特別の寄与とは
民法には改正前から寄与分という制度があります。
これは被相続人(故人)の財産形成に貢献してきた、無償で療養看護に努めてきた等、何らかの貢献をした相続人と他の相続人との公平さを図るために設けられた制度です。
しかし、これは相続人に限定されており、“義理の父母を長年介護してきたのに相続権がなく遺産が全くもらえない”などのケースが多くありました。
その後、民法改正により2019年7月1日以降開始の相続については、相続人でなくてもその貢献を考慮し、特別寄与料として、相続人に対し金銭の支払いを請求することができるようになりました。
■特別寄与者の対象となる条件
具体的には次の条件をすべて満たす必要があります。
1.被相続人の親族であること
相続人を除く、6親等内の血族と3親等内の姻族が対象です。
2.被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加に貢献したこと
特別寄与料が認められるには、無償で行った療養看護、その他の労務の提供により被相続人の財産が維持された、もしくは増加したという事実が必要です。
例えば、長男の妻が、要介護認定を受けている被相続人の介護を、介護士等に委託せずに自分で行っていた場合は、介護士に支払うべき報酬を支払わずに済んでいるため財産が維持されたと考えられます。
財産上の効果のない援助・協力だけにとどまる場合は、特別寄与としては評価され難いことになります。
Ⅱ.相続税法上の取り扱い
■特別寄与料の金額と請求
特別寄与料は、特別寄与者が相続人に対して金銭の支払いを請求する必要があります。
しかし、支払いに関する協議が調わない、そもそも協議が出来ないといった場合は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することが出来ます。
これは相続人が行う遺産分割協議とは別の協議となります。
■特別寄与料の金額が確定したら・・・
1.特別寄与者
特別寄与料の支払額が確定した場合は、特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります。
特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10 か月以内に、納税地の所轄税務署長に相続税の申告書を提出する必要があります。
注意点:特別寄与者は被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者なので、相続税額の2割加算の適用対象者となります。
2.特別寄与料を支払った相続人
相続または遺贈により取得した財産の額から、特別寄与料に相当する金額を控除した価額により相続税を計算することになります。